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今回は、フレーズの効果的な覚え方についてお伝えしたいと思います。
ご存知の通り、私はジャズギターの講師をしております。そんな中、多くの人が負のスパイラルにハマってうまくアドリブを取れないでいる姿を目にします。
私自身も、かつてはその負のスパイラルにハマっておりました。
その負のスパイラルとは、次のようなものです。
とりあえず、何かフレーズを1つ覚える。
アドリブソロを取る時に、同じフレーズを何度も弾いていても仕方ないので、他に違うフレーズを更に一つ覚える。
それが少しずつ増えて、2〜3個覚えるまでは良いのだけれど4つ5つと増えていくごとに頭が混乱して、結局1番はじめに覚えたフレーズさえも弾けなくなってしまう。
つまりは、アドリブが取れないのは弾けるフレーズの量が少ないからだと思い込んでしまうことなんです。
いろんなタイプのフレーズを学んで覚えていく事は大切だし、良い事なんですけど、それとは別に効率的な練習方法があるので、かつての私のように悩んでいる人の為にその練習方法をシェアしたいと思います。
ちなみに私は、なにか習得するのに人の何倍も時間がかかるんです。
しかし、私のような不器用な人にも大変効果がありましたので、ジャズギターは難しくて自分にはできないと諦めてしまう前に、ぜひこのやり方を試してみて下さい♪
最初に、今回のレッスンの結論を言います。
1つのフレーズをしっかり覚えて、その汎用性を考える方が、たくさんのフレーズを覚えたり、複雑なフレーズを自分で考えたりするよりもよっぽど合理的です。
YouTubeでも再生回数の高かった『神フレーズ』と同様に、たった一つのフレーズを使用してその汎用性を考えます。
『神フレーズ』が技術的な部分にフォーカスしているのに対し、今回は音の聴こえ方に焦点を当てております。
全部で7ステップに分かれており、それぞれのステップに目的があります。
大まかに説明いたします。
ステップ1〜3は今回の基盤になるものなので、繰り返し粘り強くやって体に染み込ませていきます。
ステップ4〜6は想像力を育てる練習です。
ステップ4ではニュアンスを出すための表現力や技術力をつけます。
ステップ5ではフレーズのバックグラウンドとなるコードを入れ替えます。
ステップ6では基本のメジャーフレーズを2-5フレーズの一部にしてしまいます。
これらは理論の知識などが必要になってきます。何やら難しそうですが、結局弾いているものは同じなのでご心配なく。
ステップ7は、ポジションやキーを変えて今までの事を繰り返します。
仙人になってください。
それではいってみましょう!
【ステップ1】
今回はメジャーフレーズを一つ覚えます。
そんなに難しいものではないので確実に覚えてください。
これをオリジナルフレーズとします。
オリジナルフレーズ
ここではキーをCにして、ジャズの楽曲のコード進行で最もよく出てくる2−5−1の流れを感じながら練習しましょう。Cメジャーのフレーズは2小節とします。
覚えるコツは、ゆっくり確実に何度も弾いて慣れていきます。
ポイントはスライドさせたりハンマリングさせたりして、色付けしない事です。
確実に覚えれば強力な武器になります。
【ステップ2】
ステップ2では、ステップ1で覚えたフレーズの出だしに休符を加えていきます。
休符の長さによっては、同じフレーズを弾いているのに聴こえ方が変わります。なので難しく感じるかもしれません。
まずはじめに、3拍目から入るフレーズを覚えるのがおすすめ。違和感なく身につくと思います。
3拍目から入る
なぜこのやり方が有効的なのか考えてみます。
楽曲のコード進行はドミナントモーションをしてトニックに戻って来ることが非常に多く(ここではG7からCです)ジャズフレーズは3度に解決することが頻繁に起こります。しかしこのフレーズは5度から始まってます。
もしこのフレーズを単純に覚えて使おうとすると、5度から始まるフレーズですから、解決先で3度がきたら、そこが1拍目になるので弾けませんよね?
するとこのフレーズは、ここでは使えない事になってしまう。そして更に新しいフレーズを覚えようとします。
すると、冒頭でお話しした負のスパイラルの始まりです。
でも2拍待って3拍目から入るフレーズを予めこのように練習すれば、Dm7-G7のツーファイブフレーズで3度に解決しても簡単に弾くことができます。(動画参照)
負のスパイラルを言い換えれば、せっかく良い武器を手にしたのに使い方がわからず、あまり使えないからと言って他の武器で武装しまくり、体を重くして戦いずらくなるようなものです。
足りない物を補おうとして頭を混乱させるのではなく、自分の持っている切り札を磨いていくことが大切です。
覚えたフレーズやメロディを育てていく感じです。
ここまでの、頭(オリジナルフレーズ)と3拍目からは簡単なのですが、2拍目と4拍目から弾くのは難しいです。
同じことをしているのに、メロディがポリリズムっぽくなって聴こえ方が変わります。これを繰り返し体になじませていきます。
2拍目から
4拍目から
なんでもいいので、自分の知っているツーファイブフレーズと組み合わせて実践を想定して弾いてみましょう。
【ステップ3】
裏から入るフレーズで対応していきます。ジャズらしく3連符も加えていきます。
ジャズは、裏から入るフレーズや3連符が頻繁に使用されます。
これもステップ2と同様に、体に馴染むまでゆっくり繰り返し練習してみましょう。
やはり、1拍3拍の裏が簡単で2拍4拍の裏が難しくなります。
1拍の裏から
2拍の裏から
3拍の裏から
4拍の裏から
ここまでくると、今やっている練習方法が転ばぬ先のつえになってくることがわかると思います。ジャズは何か弾こうとしても必ず間違える音楽なので、どのタイミングからでも立て直しができるようになってきます。
早く覚える工夫をする
フレーズと言うのは単語のようなもので、ソロの1部を切り取ったものです。
ソロには、物語のような流れがあります。ということは、前のメロディーに反応して弾かれたものと考えることができます。
ということは、今弾いているフレーズの前に、どのようなニュアンスのフレーズがあるべきなのかを想像することができます。
これはセンスを問われますが、私なりに下のようなメロディーをメジャーフレーズの前に弾いてみました。
オリジナルのメジャーフレーズをフェイクした2−5フレーズ
メジャーフレーズと同様に、休符を加えて弾いてみましょう。
休符をメジャーフレーズと合わせると、覚えやすいと思います。
【ステップ4】
このステップでは、音を足したり引いたりして色付けをします。
その他にもスライドを加えたり、ハンマリングオンやプリングオフなどの技術を使って装飾してみましょう。
うまくいかなくても不恰好でもいいので、自分なりに弾いてみます。
チャレンジすることが大切です。きっと個性的になっていくと思いますよ。
【スッテップ5】
このステップでは、今回覚えたメジャーフレーズが色々なコードの上で弾いてもサウンドすることを学んでいきます。
①KeyがCメジャーなので、平行調であるAマイナーKeyで次のようなコード進行を作ってみました。
|Am7 | Am7 |Bm7♭5 | E7|
Cmaj7とAm7は音楽理論で言うところのトニックの仲間なので、Am7の上で今回のメジャーフレーズは弾くことができます。
②ジャズの最もよく出てくるコード進行で1−6−2ー5もしくは3−6−2−5だと以下のようになります。
|Cmaj7 |Am7 |Dm7 |G7 |
|Em7 |Am7 |Dm7 |G7 |
③マイナー7thをドミナント7thで代理してみます。
|E7#9 |A7 |Dm7 |G7 |
④代理したドミナント7thを更に裏コードを使って代理します。
|B♭13 |E♭7#11 |Dm7 |G7 |(*譜面のコードが間違っています。B7add13になっていますがB♭13の間違いです)
このように、音楽理論を知っていると、よりクリエイティブに使える場所が増えていきます。
【ステップ6】
メジャーフレーズを2-5フレーズに応用
全てに当てはまる訳ではありませんが、例えばこんなことも可能です。
サブドミナントであるDm7とFmaj7はトニックであるAm7とCmaj7の関係によく似ているということに注目してみます。
トニックであるCmaj7から見たAm7の関係は、短三度下がったマイナーコードです。
そしてサブドミナントのFmaj7から見たDm7も、同じく短三度下がったマイナーコードとなります。
Cmaj7のオリジナルフレーズがAm7で弾くことが可能ならばFmaj7のポジションで弾けばDm7として弾くことが可能だということが考えられます。
技術的には同じことをしているのに、サウンドがかなり違うので、感覚を掴むのに少し時間がかかるかもしれません。でも、わかってくると面白いですよ。
このように音楽理論からヒントを得ることで、独自のつながりを作ることも可能になります。
これをドミナントセブンスのフレーズと組み合わせると以下のようになります。メジャーフレーズも場合によっては2-5フレーズの一部に変更できるんですね。
【ステップ7】
最後は、ポジションやキーを変えてステップ1〜5を繰り返します
【まとめ】
【ステップ1】
確実にフレーズを覚えるべし
【ステップ2】
フレーズの頭に休符を入れる。
※この時、同じフレーズを弾いているはずなのに、2拍目から始まるのと4拍目からはじまるのは少し難しく感じる
【ステップ3】
1から4拍までの裏から入る
3連符を使う
【ステップ4】
音を足したり引いたり、スライドやハンマリングを使って自分だけのオリジナルを試す
【ステップ5】
コード理論を使ってバックグラウンドを変化させる
【ステップ6】
メジャーフレーズを2-5フレーズに応用
【ステップ7】
ポジションやキーを変えて1〜5をやる
なるべく合理的に考えられるようにしているつもりです。
このレッスンはメジャーフレーズの使い方に焦点をあてていますが、ツーファイブやマイナーなどフレーズなど、様々なものに応用が可能です。
今回は理論的にも少し難しいことが含まれていますが、間違えて欲しくないことがあります。それは、理論さえわかれば音楽ができてしまうと思ってる人が案外多いのです。私たちは、先人たちの素晴らしいものを少しずつ吸収して発展させていくことによって自分だけの新しいものが作れるはずです。
というわけで、本日はここまでとなります。
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ジャズギターは簡単に身に付くものでは無いですが、粘り強く諦めなければ弾けるようになりますので頑張りましょう!
ではまた次回!