Grant Green/No.1 Green StreetのⅡm7-Ⅴ7-Imaj7を徹底分析

Grant Green / No.1 Green Street の Ⅱm7-Ⅴ7-Imaj7 を徹底分析

今回は、グラント・グリーンの名盤『Green Street』の1曲目「No.1 Green Street」に出てくる Ⅱm7-Ⅴ7-Imaj7 の部分を徹底的に分析していきます。

ジャズを学ぶとき、教則本には必ずと言っていいほど「Ⅱ-Ⅴ-Iフレーズ」が登場しますよね。
でも、名盤と呼ばれるアルバムでは、本当に教則本と同じように毎回Ⅱ-Ⅴ-Iフレーズが使われているのでしょうか?

きっと、そのまま弾かれていないことは想像がつくと思います。
とはいえ、実際にひとつひとつ観察してみる機会って、あまりないですよね?

そこで今回は、私がそれを代わりに分析してみます。
一体どんなことになっているのか、一緒に見ていきましょう!

Green Street

グラント・グリーンを代表する名盤『Green Street』

このアルバムは、グラント・グリーンの中でも私が最も多くコピーした作品のひとつです。編成はギター、ベース、ドラムのトリオとなっています。

トリオ編成にもいろいろなスタイルがある

ジャズギターのトリオといっても、そのスタイルはさまざまです。
たとえば、ケニー・バレルのように深みのあるコードサウンドを活かしたものや、バーニー・ケッセルのようにアレンジの効いた「これぞジャズギター!」といった雰囲気のものもあります。

グリーン・ストリートの魅力は“単音”のクールさ

ですが、この『Green Street』というアルバムは、ほとんどが単音で弾かれており、「クール」という言葉が本当にぴったり。他にあまり例を見ないスタイルだと思います。

1曲目「No.1 Green Street」の独特なムード

このアルバムの1曲目「No.1 Green Street」では、ベン・タッカーの極太ベースと、主役を引き立てる名人ドラマー、デイヴ・ベイリーの組み合わせがなんとも絶妙で、独特のムードをつくり出しています。

とても素晴らしいアルバムなので、ぜひ一度じっくりと聴いてみてくださいね。

今回はⅡ-Ⅴ-Iに絞って徹底分析!

そんな名盤『Green Street』の中から、今回はⅡ-Ⅴ-Iのコード進行上で弾かれているフレーズだけに焦点を絞って、少しマニアックに解説していきたいと思います。


No.1 Green Street の Ⅱm7 – Ⅴ7 – Ⅰmaj7を徹底分析!

2 in・2 out のブルース構成とは?

この曲は「2 in・2 out」のブルースです。
(※最初のテーマが2回、最後のテーマも2回という構成の意味です)

ソロパートは全22コーラス!

それ以外に、ソロパートがベースソロも含めて22コーラスも続きます。
ちなみに、ベースソロの部分ではウォーキングベースが続いており、グラント・グリーンもソロっぽいコンピング(伴奏)をしています。

今回の分析ポイント

今回は、そのベースソロの部分も含めて、Ⅱ-Ⅴ-Ⅰのコード進行上でどんなことが起きているのかを一緒に見ていきたいと思います。

No.1 Green Street」の演奏動画がありますので、音のニュアンスなどはそちらを参考にしてみてくださいね

1コーラス目

このフレーズはⅡ−ⅤフレーズというよりF7な感じですね

2コーラス目

ここはBフラット一発で歌うような簡単な音使い。

3コーラス目

ここで少しⅡ-Ⅴらしいフレーズが出てまいりました。でも特別な音使いは無くて至ってシンプル。オルタードノートもありません。グリーンお得意フレーズ。

4コーラス目

Cm7からF7のところで、そのままCm7のモチーフを保ちつつ並行移動したようなE♭m7的な音使い。結果的にF7のオルタードみたいになっています。

5コーラス目

ここは3コーラス目と同じくオルタードノートは使われておりません。しかし4コーラス目のニュアンスを感じさせます。

6コーラス目

二つの音しか使っていませんがポリリズムになっていて、なんともグルーブを出すのがうまいですねー

7コーラス目

ここはひとつの音しか使ってません。ひたすらトレモロですね。このⅡ-Ⅴに入る2小節ほど前からこれをやってます。このG音が弾いているコードに対してなんの音かちゃんとわかっていないとこういった大胆なことは出来ないんですよね。

8コーラス目

このフレーズは実にユニークでF7の1拍目にF7に対してのmaj7のE音からはじまります。しかしF7上で弾かれているフレージングがビバップの典型的なフレージングになっていてB♭にもろに向かう感じになってます。だからよくサウンドするんですね〜私も大好きで良く弾きます。

9コーラス目

グリーンは共演者の影響もかなり受けているんでしょうけど・・・かなり管楽器奏者をコピーしていたのではないかと思われます。だってこのポリリズムっぽいフレーズ、管楽器奏者の誰かやってたんだよね〜誰だったか・・・

10コーラス目

誰もが知ってる『戸板』フレーズ。トイタトイタ<トイタトイタトイタ・・・・・・こういったフレーズの印象が強いので同じようなことしかしないと思われがちなのですが、ここまでの10コーラスで同じことはしてませんからね!グリーンの別テイクなどを聴けばわかりますが、同じ曲でも常に新鮮で新しいものになってます。

11コーラス目

グリーンの特徴として、たったひとつの音を弾くのにも表現の手段がとても多いというのが挙げられます。スライド、ハンマリング、半音でも弦を変えてみたり・・・なかなか飽きがこないで聴いていられる秘密はここにあるのではないかと考えています。ここのフレーズは2つの音をスライドさせてますね。トロンボーンを意識しているのかなぁ

12コーラス目

Ⅰ度とⅣ度を意識してB♭一発で弾いてる感じでしょうかね。ここはギターライクな感じです。やはり細かいニュアンスが難しいなぁ。

13コーラス目

G7がCm7までズレ込んでる感じのフレージング。F7のところできちんと戻ります。ここでは仕方なしにズレ込んだのかと思います。即興音楽はコードに遅れて解決したりすることが良くあります。でもそれがカッコよかったりするんですよね。グラントグリーはワザとトニックのドアタマにドミナントをぶち込んできたりします。きっとそれも管楽器奏者から学んだのかと思います。

14コーラス目

ここからはベースのウォーキングソロのバッキングみたいな・・・鼻歌のように軽く歌ってますね〜。こんなことが自然に出来たならいいなぁ

15コーラス目

ここもまだベースのウォーキングソロなんでしょうかね。普通のブルースフレーズで歌ってます。

16コーラス目

この辺からボリュームが上がってきてコードソロというよりコンピングのソロって感じでしょうかね。

17コーラス目

ここでコンピングソロがピークを迎えます。コンピングソロはベースのラインやグルーブを邪魔しないようなブルージーなフレーズ。そして単音のソロへ〜

18コーラス目

ドミナントというよりはサブドミに近いフィーリングだと思います。B♭のポジションでサブドミを使い分けるのもうまいんですね〜

19コーラス目

ここはトレモロではなくしっかりと3連を弾いていきます。前にトレモロを弾いた感覚が残っているから自分自身が飽きないようにこうなったのかと思われるんですが・・・

20コーラス目

ブルージーなポリリズムを使っています。

21コーラス目

ここは前後の関係がとても重要です。Cm7の場所でD♭m7が弾かれていますがその前にE♭m7から落ちてきているんですね〜結果的にB♭にたどり着けばいいという考え方でしょうね。グリーンはいろんなモチーフを使って半音で上下高することが得意です。

22コーラス目

一番はじめに弾いたⅡ-Ⅴフレーズ同様オルタードノートもありません。終わりにふさわしい感じですね。


まとめ:実際の名演奏から学ぶことの大切さ

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

今回は、グラント・グリーンの代表作「No.1 Green Street」の中から、Ⅱm7-Ⅴ7-Imaj7というコード進行に注目して、実際の演奏ではどんなフレーズが使われているのかをじっくり見てきました。

ジャズを学び始めると、教則本に出てくる「Ⅱ-Ⅴ-Ⅰフレーズ」をたくさん覚えようとする方が多いと思います。でも、いざ名盤を聴いてみると、「あれ?意外とそのままの形では弾かれてないんだな…」と気づくこともありますよね。


フレーズだけじゃない、“流れ”を感じること

もちろん、Ⅱ-Ⅴのフレーズをたくさん知っていることは武器になります。でも、それ以上に大切なのは、演奏の中で“流れ”や“方向性”を感じながら音を出すこと。

今回ご紹介したグラント・グリーンの演奏では、シンプルな音使いの中にこそ、コード進行の意識がしっかりとにじんでいて、ただのフレーズ練習では得られないリアルな学びが詰まっています。


自分のスタイルは名人から育てる

名盤を研究することは、自分の音楽に「深み」と「リアリティ」を与えてくれます。
教則本に載っている知識と、実際の演奏から感じること。その両方が揃って、ようやく“自分のスタイル”が育っていくのではないでしょうか。

名人たちの個性にたくさん触れて、ぜひあなた自身の個性も見つけていってくださいね。